子供の頃、毎週楽しみにしていたテレビ番組がある。
フジテレビ系、金曜23時から放送されていた「ワーズワースの庭で」。
番組は案内人のこの一言から始まる―――「ようこそ、ワーズワースの庭へ」。
[ 知的情報番組 ]と銘打ったこの45分番組は、 毎回1テーマに絞り、ある時はドキュメンタリ風に、またある時は小さなドラマ風に、自在な手法でその主題に光を当てた。
ところどころで織り交ぜられる、坂東八十助と河野景子アナウンサー(いずれも当時)のMCは 落ち着いた進行ぶりで好感が持てた。 MC役が寧ろ鬱陶しく感じられる番組も多い中、これは稀有な例だったと思う。
岡田眞澄、イッセー尾形、近藤サト、竹中直人などによる絶妙な緩急のナレーション、
英国の詩人、ワーズワースのとある詩の逆さ読みを歌詞にしたという幻想的な主題歌「シャ・リオン」、
厭味なく蘊蓄を詰め込みつつも飽きさせない、巧みな構成。
細部までが隙なく練られ、丁寧に作られた番組は
この番組そのものが一つの道楽のように思わせる余裕を見せ、一種独特の存在感を示していた。
本当にいい番組だった。
この番組名を冠した書籍が扶桑社から出ている。
但し本書は番組内容を忠実に書籍化したものではなく、松山猛さんの随筆を主に再構成した随筆集、といった趣。テレビ番組の「ワーズワースの庭で」放映内容そのままではないので注意が必要。
奇しくも、本書第一章の主題は「紅茶」。
紅茶を取り扱った書籍紹介
ワーズワースの庭で
発行:フジテレビ出版/発売:扶桑社
1994年刊
【 目次 】
- 道楽
- 紅茶
- 時計
- おしゃれ
- プロヴァンス
- 和風雑貨
- 居酒屋
- 祇園
- パスタ
- 中華街
- 銀座のバー
- 着物
- ガーデンライフ
後継番組「ワーズワースの冒険」も1冊の本になっている
ワーズワースの冒険
ワーズワースの冒険
発行:株式会社フジテレビ出版/発売:株式会社扶桑社(扶桑社文庫0209)
1997年刊
【 目次 】
- はじめに
- 銀座の洋食―――資生堂と煉瓦亭 洋食はソースが基本
- ヘミングウェイの猫―――ヘミングウェイ・ハウス フローズン・ダイキリ
- 朝ごはん―――近所の朝ごはん屋
- 旅の靴と鞄―――グルカ・バッグ
- ギョーザ五十年―――鍋貼餃子 ギョーザの街
- 釣りへの誘い―――ハーディ フライ・タイイング
- 楽園のタヒチ―――サンゴ礁の島々 ゲブルツトラミネール
- ビールの達人―――地ビール 3回つぎ
- アジアでお粥―――香港、タイ、韓国 京の粥
- エスプレッソを淹てる―――急行マシーン グロッラ
- ノルマンディの旅―――カマンベールチーズ カルヴァドス
- 焼肉天国―――カルビクイとプルコギ 全州ピビンバッ
- デーニッシュ―――生地を作る28年前日本で
- ライカ病―――軍艦カメラ M型ライカ
- ヤキトリが呼ぶ―――ヤキトリ旨いどころ 旨さの結晶
- ひとり暮らしの部屋―――和にこだわる 活のいい洋風
- あとがきにかえて